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村口きよ女性クリニック

女性の身体についてエッセイ集

「オンナの「性」ってナニ? (4)

(平成5年6月から河北アルファにて連載 全6回)

目の前まで来ているエイズ

 下腹部痛を訴えて若い女性が来院しました。おりものの検査の結果、クラミジア・トラコマチス病原体による性感染症(以下クラミジアと略す)でした。「(クラミジアは)若い人に増えているんですってねー」と彼女の一言に、(あなたも若い人じゃないの)私はむっとなって「あなたたちが増えるようなセックスをしているんでしょう」と思わず言ってしまいました。

静かに広がる性感染症

 医療現場では、ここ数年性感染症に出合うことがとても多くなってきました。その代表がクラミジアです。おりものを訴えてきた女性で、15〜19歳では4人に1人、20〜24歳では6人に1人と極めて高率にクラミジアと診断されます。結婚した女性は結婚前の女性の約3分の1と低率ですが、しかし40代では再び増加します。クラミジアは無症状のものも多く、その広がりはかなりといえます。女性では子宮頚管(けいかん)炎・卵管炎さらに骨盤腹膜炎を起こし、不妊症の原因となります。妊娠した場合は流・早産とも関係があるとも言われ、産道を介して新生児にも感染し結膜炎や肺炎を引き起こします。クラミジアは診断がつきさえすれば薬によって容易に治療できますので、まだ救いがあります。

 幸いなことに私はいまだエイズ(後天性免疫不全症候群)に出合ったことがありません。時々思い詰めたように「エイズの検査をして下さい」と言ってくる患者がいます。私にとってのエイズ第1号かもしれないと一瞬緊張してしまいます。医療現場にいると男女の性の現実がはっきりと見えてきます。「性は結婚の中にあり」の規範はもはや過去のものになりつつあります。結婚前に複数のセックスパートナーを経験することは日常化しつつあり、また結婚の他にもたくさんの性があります。性の商品化が進行する中で、ある日歓楽街で発生したかもしれない性感染症が、見る見るうちに玉突き現象的に玄人・素人の区別なく広がってきている様が容易に想像されます。医療現場で見る最近の性感染症の実態は、まさにこのことを裏付けており、もうエイズは目の前まで迫ってきていることを教えています。

代償を払った行く末は

 最近の新聞の特集記事は、「男と女−昨日・今日」「なんとなくシングル」など男女の関係・生き方を考えさせるのが目立ちます。ある情報誌の意識調査によると、男女とも結婚相手の条件は「“3高”より価値観の一致」との結果でした。少しずつ本物を目指してきているのかとほっとしながらも、性の病気・不健康という大きな代償を払ってかもしれないと思って重い気持ちになりました。

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