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村口きよ女性クリニック

女性の身体についてエッセイ集

女と男の性と生 (3)

(平成15年7月12日から毎週土曜「赤旗」にて連載 全6回)

エイズ流行の足音

 エイズ流行の足音が高まっているという。1つは性行動の活発化、無防備化による日本国内からの足音である。もう1つは中国・アジア諸国からの急速に高まる足音であり、日本上陸までにもう余り時間が残されてないという。確かに日本のHIV/AIDS報告数は相変わらず増え続けている。
 「性病」が心配、検査してほしいと言って来院する患者さんが多くなったが、クラミジアは10代では3人に1人の高率で感染者が見つかる。セックスがあれば誰でも感染するかも知れない身近な感染症ではあっても、環境汚染と言われるほど最近の若者の性行動が問題なのである。
 「こんなに性感染症が増えて、日本の将来はどうなるの?あなたたちに明日の日本を任せられないわ。あなた1人の健康問題に止まらないわ・・・」毎日言いつづける日々である。どんなに心許なくても日本の未来は彼らに託すしかないから・・・。
 相変わらず男性主導で展開されている性関係、「コンドームを使わなければ嫌だ。やらない」と言えない女性たち。出すぎたことを言ったら彼に悪いから、大人たちと少しも変わらない意識、女らしさのままに・・・。身近なSTDに感染していれば、数倍エイズに感染しやすいことを知っているのだろうか。女性はとくに感染しやすいし、はたして妊娠できる体であり続けられるのか・・、暗澹とした気持ちになる。
 過去の恋人が多数を占め、恋人以外にもセックスする者が多い。感染リスクの高いセックスにもかかわらずコンドームを使わない者が6〜7割、危機管理意識の低さは驚くばかりである。セックスしても人間関係は深まらず、感染しても誰にも怒りをぶっつけられない、なんと切なく悲しい時代なのであろうか。

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