日本人女性のすべての癌の罹患数は1975年以降増加し続けています。 2000年のがん罹患数は1980年の約2倍です。
しかし、年齢構成の変化、高齢化を考慮して修正した「年齢調整罹患率」を見ると必ずしも増えていません。
【全がん】
【死亡】
【罹患】
【部位別年齢調整罹患率(日本人口) 】
主要部位別にみると、近年増加しているのは「乳房、肺、卵巣」で、減少しているのは「胃、直腸」です。
資料:国立がんセンターがん対策情報センター
ここでは女性特有のがんである乳がん、卵巣がん、子宮がんの年齢調整罹患率を2000年と1980年とを比較し、年代別に見てみます。
30歳代後半から罹患率が増加。
特に40歳代後半から50歳代前半の罹患率増加が目立つ。
乳がんの増加の背景には、日本人女性のライフスタイルや食生活の欧米化が原因と言われていますが、最近の非婚傾向や出産の高齢化など、つまり妊娠・出産をしないことと関係があります。
【年齢別がん罹患率(1980,2000)】
40歳代から罹患率増加が目立ちます。
卵巣がんは従来日本人女性は欧米人に比べて少ないのですが、近年その差は縮まりつつあります。
妊娠や授乳の経験がリスクを下げているとの最近の研究報告もあり、卵巣がんの増加は女性のライフスタイルの変化との関係が考えられます。
20歳代から30歳代では罹患率が増加。
50歳代から罹患率が減少。
近年、ほとんどの子宮がんの原因はセックスによるHPV感染に因ることが分かってきました。
子宮がんの若年化の背景には、セックスの低年齢化、活発化、未婚期間の延長など、性行動の変化と関係があることは明らかです。
資料:国立がんセンターがん対策情報センター
さて、今までは女性とがんについて説明してきましたが、それでは本題のHPVと子宮がんについての説明をいたします。
ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)の略で、ヒト乳頭腫とも言われるウイルスです。HPVには100種類以上のタイプがあり、そのうちの13種類のハイリスク型HPVが子宮がんの原因になると考えられています。
100%とは言えませんが、コンドームを使用すれば感染予防に効果があります。
HPVの感染を予防するワクチンが開発され、2009年に日本でも承認されました。
HPV検査はがんになっているかどうかを調べる検査ではありません。
がんを引き起こす可能性のあるウイルスの感染を調べる検査で、ハイリスクHPVに感染しているかどうかを調べるスクリーニング検査と、HPVに感染しているかを調べるタイピング検査があります。
HPV検査によって、子宮頸がんまたは異形成(がんになる前の段階)になっている可能性があるかどうか、また将来、子宮頸がんまたは異形成(がんになる前の段階)になる危険性があるかどうかも判ります。
ハイリスクHPVとは?
16型 18型 31型 33型
35型 39型 45型 51型
52型56型 58型 59型
68型
の13種類です。
HPVに感染しても症状はありません。
HPVは70%が1年以内に、90%以上は2年以内に、免疫力により自然消失するため、治療は必要ありません。
しかし、10%程度は感染が持続し、3年~8年持続感染が続くと、ウィルスによって細胞異常(異型細胞、異形成)を起こし、その一部は癌に進展します。
細胞異常を早期に知るためには、子宮がん検診を受けることが大切です。
異形成とは?
がんの前段階のことを言います。
異形成になっても、必ず癌になるわけではありませんが、一部(約10~20%)が数年くらいの経過で癌に進展します。
異形成と診断されたら、きちんと経過観察を受けることが大切です。
また、HPVに感染しているかどうかを検査することにより、その後の経過観察がどの程度必要か、リスクに合わせた判断ができるよう¥になります。
子宮がん検診とHPV検査を一緒に受けましょう。
検査の時点で細胞異常を検出するだけでなく、将来の異形成や子宮頸がんに対するリスクの有無を調べることが出来ます。