HPVのタイプは100種類くらい知られており、中でも子宮頸がんの発がん性の高いハイリスクは14種類が知られています。
がんへの進行が最も速いタイプが16,18,45,31,33,52,58型です。
次いで51,35,39,68,56,59,66型です。
日本人は16.18型に因るがんが最も多く、20~30代女性では約8割を占めます。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は現在3種類あります。
サーバリックス(2価ワクチン)は16.18型に対するワクチンです。
ガーダシル(4価ワクチン)は、16.18型と尖圭コンジローマの原因となる6.11型を加えています。
最近承認されたシルガード(9価ワクチン)は、最もがんへの進行の早い16,18,45,31,33,52,58型に、尖圭コンジローマの予防のための6,11型を加えたものです。
定期接種(※)として承認されているのはサーバリックスとガーダシルです。
シルガードが定期接種の対象となるのは数年先と予想されます。
接種を希望される方は手続きが必要です。
対象者:小学校6年~高校1年生相当の女子
今回注目されるのは、肛門がん、その前駆病変への効能が追加され、9歳以上の男子へのワクチン接種も承認されたことです。
【男子のHPVワクチン接種】
〜子宮頸がんが増え続けています〜
1990年代に入り日本社会の性開放は急速に進行し、「性は結婚の中にあり」の性規範はすっかり破綻しました。
10代から性交を経験することは今や普通のことになりました。
性は自己責任において管理していかなければなりません。
子宮頸がんが若い世代に急増してきており、妊娠・出産前に子宮頸がんになる女性が増えてきました。
唯一ワクチンで予防できるがんは子宮頚がんのみです。
世界ではワクチン接種により、子宮頸がんは大幅に減少に転じています。
【子宮頸がん死亡数】
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))より作成
【子宮頸がん年齢階級別罹患率】
「上皮内がん」とは、がんのステージでいえば0期のがんで、 粘膜内にとどまっているものをいいます。Mbr< 治療によって治癒します。
【上皮内ガンを含む】
ピークが若い世代へ変化しています
【上皮内ガンを含まない】
若い世代に急増しています
妊娠・出産前にがんになる方が増えています
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))より作成
1985年と2015年を比較すると、過去30年間で
円錐切除術について考えてみましょう。
たとえ早期のがんであっても、ならないことが一番です
「上皮内がん」とは、がんのステージでいえば0期のがんで、 粘膜内にとどまっているものをいいます。
【円錐切除術】
癌のある部分を円錐状に切除する
【単純子宮全摘術】
子宮だけを切除する
【上皮内ガンを含まない】
子宮と膣の一部、卵巣・卵管まで切除する。リンパ節もとる。
(Garland SM, et al:Clin Infect Dis 63:519-527,2016)
17歳になる前に接種した場合、子宮頸がん罹患リスクが88%低下
→若年での接種の方がより効果的である
Lei J.et al. N Engl J Med. 2020 Oct 1:383(14):1340-1348より改変
2020年、スウェーデンで世界で初めて国家規模で進行性子宮頸がんの減少効果を示す発表がありました。同国では、2006年HPVワクチンが承認され、4価ワクチンが接種されてきました。
その結果、10-16歳で接種した場合、子宮頸がん罹患リスクが88%低下し、17-30歳で接種した場合には53%低下し「若年での接種の方がより効果的である」ことが示されました。
HPVワクチンの進行性子宮頸がんに対する高い予防効果が証明されたことは、女性そして人間社会に大きな福音をもたらすだろう画期的な報告でした。
すでに性交経験があってもワクチンは有効です
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)はすでに感染しているHPVを排除することはできませんから、初めての性交を経験する前の接種が最も有効です。
しかし、性交経験があったとしても16型、18型の両方に感染しているケースは極めて少ないので、例えばワクチン接種時に16型に感染していても18型に感染していなければ、 接種の意義はあります。
また、一度16型、18型HPVに感染したとしても、HPVは自然に排除される可能性が高いことがわかっていますが、検査では検出されないレベルで持続感染をしている場合もあります。
しかし、こうしたHPVの自然感染では十分な抗体が得られない(終生免疫ができない)ため、繰り返し同じ型のHPVに感染を起こすことがあります。
ワクチンを接種して 次の感染を防ぐことも意義のあることです。
出典:神奈川県医師会「子宮頸がんとHPVワクチンについて」より引用
ワクチン接種により、日本社会の子宮頸がん増加の流れを変えたい・・・
減少に転じたいと心から願っています。
【参考資料 きよクリニュース】
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