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エッセイ集

「オンナの「性」ってナニ?

(平成5年6月から河北アルファにて連載 全6回)

(3) 軽視できない思春期のトラブル

 私が初経があったのは、高校2年の時でした。当時でもずいぶん遅い方でしたから、早熟だった姉からは「病院に行ってみたら…」と心配されました。特別なことはなにもしませんでしたが、幸いまあまあ無難に女性として成熟してこれたのではないかと思います。

 思春期の女性が産婦人科を受診することは最近ではけっしてめずらしいことではなくなってきました。月経が止まらない、たまにしかこない、まったくない、月経痛がひどい…、おりものが多い、たまに妊娠かもしれないなど、いろいろ訴えてきます。一時的な異常・不調であることも多いのですが、きちんとした治療を必要とすることもあります。

現代病といえる無月経

 初経以来ほぼ順調にあった月経が突然なくなってしまう、思春期の続発無月経は軽視できない異常のひとつです。生活環境・人間関係の変化、受験戦争などからくるストレス、間違ったダイエット志向など、今日的社会状況と関連した現代病といえるかもしれません。性成熟のペースはいったん故障してしまうとなかなか回復しません。一年以内に回復するのは4割ぐらいで、かなりは長期間の管理を要します。あって当たり前の月経がないまま大人へなっていくことが、女性の心の成熟をも屈折させはしないかと心配になります。

 学校の保健室、そこは月経の異常に不安を持つ女性の駆け込み寺かもしれません。月経痛のひどい中・高校生がよく紹介されてきます。その多くは鎮痛剤を投与し、楽な過ごし方などの指導をするだけでよいのですが、一部には卵巣が腫れて・・・厄介な子宮内膜症が発症していることもあります。最近の高校生は大人と変わらないほど立派な体つきをしていますので、こうした大人の病気と無縁ではなくなってきました。

可能性を開く思春期を

 思春期妊娠は本人にとっても医療者にとってもつらく心を痛めることです。心の成熟のないままに男性性を受け入れてしまった結果ですから、ほとんどは妊娠中絶をすることになります。エイズに象徴されるように大人自身が性愛に病み、葛藤している社会では、思春期の男女の性愛の行方は、とても厳しいものがあると思われます。体の傷が癒えたら、心の傷は生きる知恵に変えていってほしいと願わずにはおれません。

 今の時代、無事に思春期をクリアし、心身ともに健康で成熟した大人になっていくことは、そんなにたやすいことではありません。女性性を生き、子供を産み、女性でもより個性的に貪欲に自己実現、たくさんの可能性を開くことのできるよう思春期生きていってほしいと思います。

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