(平成5年6月から河北アルファにて連載 全6回)
この季節、家のまわりではニヤァーン…と猫の泣き声が耳に響きます。猫や犬に限らず、私たちの身近な動物にはみんな発情期というものがあります。最も進化した人間にはそういうものはありません。脳がよく発達し、性本能をうまくコントロールできるようになったためです。いつでも好きなように性行動ができるようになりましたが、その分私たちは日常的に生殖のための負担を負うことになりました。男性は精子をつくり続け、女性は卵子の成熟・排卵、月経と性周期を繰り返しています。
子供を産むことのできる女性にとって、生殖のための負担はとても大きいものです。月経のたびに苦痛に悩む女性にとっては、女であることを疎ましく思ってしまうこともあります。顔面蒼白、息も絶え絶えに飛び込んで来る救急の女性患者、オロオロするばかりの付添人、医療現場ではよくある光景です。鎮痛剤を注射されると、患者はまもなく普通の女性に戻っていきます。大きな負担を背負った性は、一方では簡単には参らないという逞しさを学びとっていくのかもしれません。
女性にとって月経は健康のバロメーターといえます。生殖機能は、卵巣と脳の性中枢(視床下部−脳下垂体)との一連の調節糸によって営まれますが、その変調や異常、また子宮やその周辺の異常は、月経に反映してきます。
量が少ない、稀にしかない、全くないなどの場合は、機能低下や失調が考えられ、放置できないことも少なくありません。量が多すぎる、頻回にある場合は子宮筋腫、子宮内膜症などの病気の可能性があります。長く続く不正出血のほとんどは、機能性出血と呼ばれるもので、調節糸の一部乱れによるものです。
月経時には多少の苦痛はつきものですが、中には日常生活ができなくなるほど大変な、いわゆる月経困難症の女性もいます。その多くは鎮痛剤などを使えば心配ありませんが、一部に子宮内膜症といわれる厄介な病気に原因していることもあります。食生活、生活様式などの変化によって最近増えており、注目されてる病気です。長い経過で不妊症の原因となりますので、若い女性にとっては油断できません。
人間は日常的に生殖機能を持ちながら、かなりは生殖を目的にしないで性行動をしています。適切な時にそして望む時に首尾よく子供を産みたい、それは女性みんなの望みです。女性の体に気付き守っていくことは、女性が健康な充実した人生を送る上でとても大切なことです。働く女性が増え晩婚化が進む今日、特に重要なこととなっています。