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エッセイ集

女と男の性と生

(平成15年7月12日から毎週土曜「赤旗」にて連載 全6回)

(2) 少子社会は止まらない

 「出生率1.32、過去最低」「生まれた子供の数も最少」、厚生労働省が昨年の人口動態統計を発表した。一方で、人工妊娠中絶は1996年以降10代、20代前半のいまだ結婚が視野にない若年層で増え続けている。
  幼児を連れた懐かしい患者さんが受診した。彼女は17歳の時大検をまじかに控え妊娠が判ったが、母親が「主人と二人で育てます」と決心したことで無事出産した。こうした親の支援の下で自立を目指せるケースは最近ではとても珍しい。
 妊娠が判っても親に相談する者は1割に過ぎず、「愛は二人の世界、その責任も二人で?」、彼女達の多くは彼や身近な友人に相談するだけで妊娠中絶を決めていく。市販の妊娠試薬で妊娠を確認し、中絶手術を決め彼を連れだって受診する。なぜか深刻さはなく、誇らしげに華やいでさえ見える。
 彼女も彼もその3割の者は妊娠が分かった当初「産みたい」「産んでほしい」と思ったという。中絶費用を彼が負担できたのは4割にも満たず、4割のカップルは割り勘だった。避妊が不安だった、性は女性にハンディがある…冷静に考える余裕もなく、心情・感情的に一体化し、彼らなりの精一杯の知恵と経済力で難局を乗り切っていく。親、学校、職場、周囲の先輩大人達には知られることはない。
 若者の雇用悪化、国民年金未納20代の過半数、晩婚加速し交際は長期化、初産で退職3人に2人…容易に自立を許さない社会が続く限り、若者は安心して未来を展望できまい。男女共同社会基本法ができても、子どもを産まない女性を蔑視し、レイプを擁護する時代錯誤の政治家が臆面もなく日本社会を主導している限り…。

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