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エッセイ集

女と男の性と生

(平成15年7月12日から毎週土曜「赤旗」にて連載 全6回)

(5)限りなく未成熟な日本

 10数年前、ある会で著名な性教育研究者の話を聞いた。『限りなく未成熟な』日本人男女の性・・・。やっぱりそこまではっきり言い切っていいんだ・・・と深い霧の中からようやく抜け出た思いがしたものである。
 当時、日常診療の現場で聞かされる中年女性の話に辟易させられていた。「セックスはもういいです」「月2回だけセックスする日を決めています。主人に悪いから」「主人はあんたに貸してもらえなくなったと言うんです」・・・・。男性優位の社会の落とし子とも言えるのか、一方通行の性が女性側からの一方的撤退によって終焉を余儀なくさせられて行く様に落胆し、自分自身の性も交錯し悶々していた。
 最近あるセクシュアリティ研究会の熟年世代のパートナーシップと性」の調査結果に注目した。性交渉が1年間まったくなかった人は、男女とも約4分の1を占め、その性交停止年齢は女性52歳、男性57歳であり、その理由は、約半数が女性では「自分の関心の喪失、男性では「相手の関心の喪失」と答えている。
 望ましい性関係について、性交渉を伴う愛情関係とする者は、女性では40代後半から50%を切り、50代後半から急減し20数%になる。一方男性では60代前半まではほぼ60%台をキープし、50%を切るのは60代以降である。熟年世代の男女の性欲、性的ニーズは急速に乖離していくのである。戦前からの家父長制を引きずったまま、結婚、しかも男性中心の制度に取り込まれ市民権を得てきた男女の性、それは今様々な矛盾を露呈しつつ閉塞状態にある。昨今の若者たちの無軌道な性もこの社会の矛盾、男女の生と性の陰影であり、その責任の一端は大人たち側にある。そのことに思い至れば日本の未来、男女の性成熟への手がかりもきっと見えてくるにちがいない。

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