(平成11年10月4日から毎週月曜 河北新報にて連載 全10回)
身体の発達とともに、性機能の成熟を果たす思春期、それは子どもたちにとっては体も心も大きく揺れ動く人生最初の試練の時です。子どもでもない、大人でもない思春期の体と心・・・、特別の医療の受け皿の必要性が認識されるようになってきました。日本で初めて「思春期外来」がつくられたのが三十年ぐらい前です。現在でも全国170ヶ所ぐらいと数少なく、そのほとんどが従来の診療所(婦人科、精神科、小児科、泌尿器科、内科など)に併設された形で運営されています。
子どもたちが描く思春期外来の理想像は、<①いかにも医療機関って感じじゃない、気軽に相談に行けるような所 ②清潔で明るい建物 ③図書館に行けるような感じで入れる ④じっくり聞いてくれて、分かりやすく説明してくれる>(平成5年度東京思春期相談総合対策事業調査資料より)だそうです。そんな所があれば、彼らはどんなにか救われるだろうと思います。
思春期外来を訪れる中・高校生・・・、最近は体格の大きな子が目立つようになってきました。縦にも横にも母親を大きく引き離している子も珍しくありません。近年、生活の社会・経済的水準の向上が子どもたちの身体的発育促進現象をもたらしました。これほど急激な体位の大型化は国際的にもあまり例がなく、とても注目されることです。1990年代では10年前と比較し、12、3歳で男女とも18〜20cmもの大型化が進み、かつ最大発育年齢も男女とも約1歳早くなってきました。
早発する身体的発育は性の早熟化をもたらし、思春期のより早い時期から体が大人になってしまうということです。心の成熟が追いつかず、心身のバランスが一層取りにくくなっているという、最近の思春期の特徴を大人たちはしっかり受け止めなければならないでしょう。
最近、「高校3年生の性交経験率が40%近くに急上昇、常時避妊30%を切る、性感染症拡大の危険」とのショッキングな報道がありました。中・高校生の性交経験率は年を追って増加しています。そして思春期の妊娠も性感染症も確実に増加の一途をたどっています。
人間にとっての性愛の意味を知るにはあまりに未熟すぎる思春期に、行き過ぎた行動の結果として起こる妊娠、性感染症はあまりに重すぎます。妊娠を告げると泣き出す子、金はなくても親には相談できない子、「性感染症は自分には無縁だと思っていた」と、あっけらかんと話す子・・・。彼女たちをどのように救ってあげられるものかと、考えあぐねてしまうことの多い医療現場です。
先ごろ、厚生省が中学1年の女子に正しい性知識や、若年期の喫煙・飲酒が母体に与える影響などを説明した「女性手帳」を配布する方針を決めました。なぜ女子だけなのですか?性行動はもはや止めることはできません。男女交際の決定打は、男性側に握られていることが多いというのに・・・。今、大人側の意識が変わらなければと思います。