(平成11年10月4日から毎週月曜 河北新報にて連載 全10回)
思春期外来を受診した中学3年生に「初潮は何歳でしたか?」と聞いたら、「11歳です」との返事でした。「早くて大変だったね」と言ったら、「全然・・・、いっぱいいるよ。小学4年生できた子もいるよ」と軽く言われました。最近の正確な全国統計はいまだ聞いてませんが、従来知られてきた平均初経年齢12,3歳もさらに若年化してきたかと思われることが多くなってきました。右下腹部痛の訴えで11歳の患者が救急センターを受診しました。診察した小児科医が急性腫垂炎を疑ってみましたが、はっきりとは判断できず、月経2日目とのことなので思春期外来への紹介となりました。彼女は10歳で初経があり、今回、月経開始2日目から痛みがあったとのことです。超音波検査で骨盤腔(くう)に月経血の逆流かと思われる所見はありましたが、鎮痛剤で経過をみていくうちに軽快しました。これから毎月、月経のたびに痛みで悩まされることになるのでしょうか。
「4ヶ月間、月経がなくて、ようやく月経が戻ってきたらたくさん出血した」との訴えで顔面蒼白(そうはく)な中学3年生が来院しました。血色素が平均の半分にも満たず、ひどい貧血状態で早速入院となりました。夜中に再び大量の出血が起こり、ついに輸血をする羽目になりました。月経といえども生命の危険と決して無縁ではありません。
思春期外来を訪れる女子の訴えで最も多いのが月経に関することです。月経のたびに下腹部痛、腰痛、頭痛などで苦しめられる「月経困難症」、ホルモンのアンバランスによって起こる「機能性出血」、ストレスやダイエットなどで月経が止まってしまう「続発無月経」−などがあります。思春期疾患の約半数がこうした月経異常で占められます。
性機能の発達途上にある思春期では、月経の不調・異常は起こるべくして起こっているとも言えます。従来、月経異常の多くはいつの間にかうまく軌道修正され、自然に治っていくものとされてきました。今日、子どもたちを取り巻く状況は大きく様変わりしてきています。
体位が大型化し、いっそう早熟になった子どもたち。習い事・受験などの忙しさ、友人・家族関係の複雑さ、過剰な情報に心休まらない日々・・・。デリケートな性機能はその発達途上でさまざまに影響を受け、軽視し難い月経異常となっていくことも決して少なくありません。思春期を上手に乗り切り、大人の女性に成熟していくことがなかなか難しい時代になってきました。